忘れ物/たもつ
テーブルの上に何かを忘れてきてしまった
いったい何を忘れてきたのだろう
それは大きなもの
ではなかった
かといって小さなもの
でもなかった
賞味期限が切れそうなもの
でもなく
爆発するもの
でもなかった
放っておけばどこまでも伸びていくピノキオの鼻
のようなものでもなく
放っておけばいつまでも鳴り続けている目覚まし時計
のようなものとも違った
色?
色はついていた気がする
少なくとも
「あなた、忘れ物よ」
と妻から電話がかかってくるようなもの
でないことだけは確かだ
満員電車で派手目なおねえさんの香水に咽んでいるときも
デスクで提出期限
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)