パーフェクト・セラー/霙小町
君に愛されるためには
不幸でなければならない
孤独とは売り物であり
知恵である
君の目に留まるよう
わたしはわたしの孤独を売る
君の視線を盗もうと
ああ 今日はどうして不幸をしようか
目の端には卑しさを浮かべて
遠くから見つめるばかり
孤独を軽蔑する快活な目
浅薄なわたしの体を射貫く
君の視線がほしい
不幸を知らないその目は
わたしをあざ笑うだろう
君に愛されたい
幸せなままではいけないのだ
そのためにわたしは
孤独を飼い慣らさなければならぬ
不幸を知る人間の
官能じみた目がほしい
君をみつめ
捕らえて放さない目を
孤独を売り
不安を売る
わたしは官能を欲しがり
君を見つめるのだ
ああ どうして
まだ息が続く
君に愛されるためには
不幸でなければならない
戻る 編 削 Point(2)