やりおおせる/はるな
 

きょう一日をやりおおせた
とおもうのは
はげしい気もちをした日とか
ふかく考えをした日とかでなく
よっぽどの働きをした日でもなく

さるすべりの花の咲いてあるのを数えたり
五つからなる扇風機のはねのほこりをとったり
東から西を十二分割にして
日のあるくさまをじっと見ていたり
した
とき

きょう一日をやりおおせたと安堵し
あす一日をやりおおせるのかと心暗くなり
それでもきょう一日をやりおおせた

やりおおせた
とおもう
大した成果をあげるのよりも
好きな男に抱かれるのよりも
世界の真理をかいま見るより
それは
おそろしくたいへんなことであるよな
うしろをみても
ふところをみても
すこし脇をみても
たとえ前をみたとしても
いかにも安らかな死があるというのに
きょう一日を
そこへゆかずにやりおおせるのは


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