The world/サカナ
ガラス玉の中で夜が
凍ったみたいに動かない
だからここには何も来ない
昼も夕方も往ってしまって
世界がポツリと佇んでいる
私は夜を握ったまんま
電車に乗ってひとり
闊歩している
この世界を
電信は届きましたか
この力のない傾き
世界がゆるやかに角度を変えました
ここでは
何百何千という焦点が
世界を捉えようとしているけれど
私の手の中の秘密を
誰も知ってはいない
(タタンタタン)
差し当たってのカーヴ
赤いシートの背もたれ
重心は世界へと傾く
この重みを確かめている
夜を拳ごとポケットに入れました
人の匂いがします
酸素のにおいがしま
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