怪しい料理教室/梅昆布茶
 
ースでアレンジすれば
カレーだってシチューだって中華味だってできるはず

一鍋つくれば三回ぶんぐらいのおかずにはなる
文句をいわなければ十分生きていけるし
文句をいってくれるひともいない

もうひと手間でサラダか酢のものかあるいは
からし酢味噌で食べる蛸などあればもうしあわせだ

ふだん薄幸な人間は飽和するのもはやい

記号料理論というのをねつぞうしてしまえば
あの可愛いにんじんや色黒の泥つきごぼうやら
記号素のざわめきが背景に退くときに

人間の経験の連続性を保証する記号としての
怪しい料理が日常のなかで
ひかりを放ち始めるのだがしかし

それはともかく
ときどきは誰かにつくってほしいと
思うのはせめてもの哀しい抵抗なのだろう





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