おさむとかなめ/salco
 

誰かが御飯を食べているみたいだった

雑草だらけの固い庭には
二人が飼う鳩の小屋があった
覗き込んでガヤガヤやっていると
灰色の窓の中から金切り声がしたものだ
「おさむ! かなめ!」
土気色のカマキリみたいなお母さんと話したことはない
近所のおばさん達との井戸端会議も見たことがない
自分の子には優しい声を出す時もあったりするのか
二人に訊いてみたことはない

ある日、かなめが犬を拾って来た
さっそくみんなで見に行くと
茶色い仔犬が縁の下にいた
麻紐で繋がれていて
もうかなめにはなついていた
きっとかなめが小皿にミルクを入れて
何度も縁側を下りて来たのだろう

[次のページ]
戻る   Point(3)