イレギュラー・バット・トゥルー/ホロウ・シカエルボク
おまえの脳味噌のいたるところに悠然と生えた牙を見たか?その牙はおまえがこれまでに築きあげたささやかな概念を欠片も余すところなく喰らいつくしその概念の骨組だけを残して霧散するだろう、おまえの脳髄を過去というミストがゆっくりと通過するとき、おまえはそれが生きる理由であることを知るだろう、ひとを生かすものは未来ではない、心身のいたるところに浸透した無数の過去だ、その絡みついた浮遊霊のようなものをある種の思いの成就によって振り払わんとすること、それがひとの人生の正体だ、あのとき、とひとはうたう、それだけですべてが聞いている誰かに伝わるとでもいうように、そのひとことだけで個々の世界はすっかり
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