片隅から/木の若芽
過去に戻るのではなく、過去を引き寄せ甦らせることで、今のつらいことを越える力
ができる気がします。この夏は古いノートを何冊も読み返すことになるでしょう。
「片隅から」
木の若芽
ひとりでワインを飲みにきたジャズバーの片隅
痛む頭を ふるえる指を
あたためるように冷たいワインが染みていく
やさしいこともいっぱいあるものね
冷えたグラスが目の前に置かれてから
その表面に水滴がつくまでの間に
わたしの心に浮かんだこと
すべてがあなたに似てくる
透き通った白ワインにあなたの顔の波が立ち 沈んでいく
その液体でのどをうるおす
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)