シリウス/有邑空玖
夜空の端で光る
冬のあいだ
君はシリウスの子供になる
かじかんだ手をポケットに入れて
足許だけを見て歩く
冬は嫌い
冬は嫌いだよ、寒いからさ
呟きながら
夏の海や茅蜩(ひぐらし)のことなんかを考えて
どうにかやり過ごす長い夜
甘えるのが下手なあたしの
両手はいつも冷たいままだ
嫌いだよ
嫌いだよ、冬なんか
でも
空の端っこに張り付いているシリウスが
ちかちかと笑うように瞬く
「君のみちしるべになってあげるよ」
いつだって
寂しくない、なんて云うのは嘘で
それでも 冬のあいだ
歩き方を忘れそうなあたしを照らしてくれる
君はシリウスの子供だから
だいじょうぶ
ひとりでだって 歩いていけるよ
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