ピーク/あおば
ぼ同じ密度の我が身だって空に浮かぶはずだと
ピッケルも放し
集合する雲の峰に飛び移り
姿を消した
一部始終を見守った仲間たちは
眼をぱちくりして再び仰いだが
空はいっそう青みを増して高度を高め
もうジャンプしてもピッケルで突き刺せるような柔な球体はどこからも現れない
気象状態が急変したからだと信じられていたが
憲法草案を握りつぶした者たちの邪念が空を硬直化させたのだということは
当時はまだ知られていなかった
彼岸から此岸への徒歩連絡も可能となった現在でも
オリンピック中継を好きなだけ堪能するのは地上波だけでは難しく
権利と権威の浮遊する空間では青い空も硬直化を進め
もはや、軽装になっても飛び移れなくなっていると感じた
近代化の歩みの中で硬直化が進みながら
落下するほどに比重を増した空の構造体がまだ浮かんでいられるのはなぜなのか
表彰式の片手を上げる勝者の笑顔を見ながら考えている。
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