怪談 をんなふくら萩之変/salco
 
、鉋ぶちまけて
ひと足遅れの雷(いかずち)一閃、ひっくり返す大盥
土砂降りの空を掴んでいきんだところへ
返しの一刀
仕掛け花火の勢いで飛んだ右腕ジャッポンと
堀にはまって麩を足し波の鯉にも食われず
斬り捨て斃死の親方の
冥土の旅に供しそびれて、大よそ当年
二百と十(とお)年

そこは手だけに恨めしやとも覚えぬが
仰天の五指にみなぎる置いてけ堀の手癖に迷い
夏の夜な夜な出るそうな
鬼のつらよりいかめしい舗装が熱吐く
地づらをふわふわ
さわらぬ上に何とやら
おそれ多いは桜でんぶの高望みとばかり
後ろから遠慮しいしい、道行く女人の
足こぶ撫でる
とくの昔に銭湯もきれいさっぱりイタめし界隈
江戸は京橋、首都高速の下あたり
おさわり助兵衛腕(かいな)い話
おあとがよろしいようで

戻る   Point(4)