冬と息/木立 悟
たくさんの傷が同時に治りかけ
あちこちがみじめにむずがゆい
降る花のなかの
在る言葉 無い言葉
蛇の肌
猫の首
落ちつきのない
みどり みどり
三つの角に火を点し
夜にこぼれる
粗い金を視る
待ちわびるもののない
階段と音
巨きな影が
街と野を分け
夕暮れは
石の路を昇り
風がふいに
月を見なくなり
明るく直ぐにわだかまり
遠くのうたを 連れてこなくなり
みどりを置いて
他は居なくなり
冬は空へ空へ散る視線
常にそばを離れぬ岸辺
見るまに音になる岩を
こぼしこぼしこぼしこぼして
わ
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