ねむる/木屋 亞万
 

ねむる
すこしずついのちになりながらねむる
より細かに
よりおおきく
体ができていく

ねむる
この身ひとつのせかいのなかでねむる
じぶんの鼓動がひびく水のなか

ねむる
はじめての呼吸につかれてねむる
鳴いて泣いて
辛うじてねむる

しわしわの顔がかわく
水でみちていた肺もかわく
かわきはじめることが
快でも不快でもある

ねむる親のよこで泣きわめく
どうしてもかわきにたえられない
あんなにも体内が水でみちていたのに
あたえられるのは栄養のある乳ばかりで
うるおうには飲んでも飲んでも足りはしない

ねむる
なつかしい体温につつまれてねむる
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