時代外れなエッセイ 虫/佐々宝砂
 
夏休みは毎年キャンプにでかける。たとえ休みが一日しかなくても無理矢理でかける。わざわざキャンプにでかけなくてもうちは田舎にあるから山のふもとに住んでいるようなものなのだけど、やはり山奥にまで入り込むと、空気が違う。水が違う。植物が違う。住んでいる虫が違う。違いがあるから山奥に入り込みたくなるのだ。自宅にやってくる虫ならほとんどが馴染みの虫ばかりで、いちいち図鑑を見て調べる必要もないのだが、アマゴが泳ぐような渓流近くでみる虫たちは名前のわからんやつらが多くて、図鑑をみてもわからなくて、「おまえ何者だよ」と問いかけたくなる。もちろん問いかけたって答はない。虫は自分が何者なんて考えない。どんな特殊な虫だ
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