スミレのレ/灘 修二
 
高山の峰に
一輪のスミレが咲いていた
そのスミレはピアノの音を奏でた
薄い空気に澄み渡る音

スミレのレの音を聞きたい
スミレのレの音は
誰にも出せない音
スミレのレ音を聞くと
私は消えて
スミレだけが紫色の息を吸って
長い眠りから目覚めて
不協和音たちを眠らせて
どこまでも
響きわたり
煉獄にいる
私にも聞こえてくる
レ音は
蘇生というよりは
鎮魂。
死者の眠りの
寝息の音。

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