どこにもいかない、はなれない、といった、皿のうえで
ソーダのゼリーがゆれていて、わたしはなんだかかなし
くなって、すこしだけ涙をながした、冷たくて堅そうに
光っているスプーンを手にとると、それはじっさいに堅
くて冷ややかだった、夏がおわったらむかえにくるから
と、大きな手のひらで、わたし手をつつんでそういって、
うさぎが飛び跳ねるように、すばやく何度か瞬きをした、
わたしは季節と季節のあいだに線を引くことを想像する、
アスファルトのうえに、横断歩道を引いていくような要
領で、夏と秋のあいだに白い線を引いていく、ここから
こっちが夏で、むこうがわが秋、そのようにしてなにか
となにかを隔てていくことを想像すると、わたしたちは
もう、2度と出会うことはないのだろうと、そうおもっ
た、気泡をかかえたゼリーが光をあびて、海のように輝
いていた、