小夜曲/ルナク
ピアノ弾くあなたの指を
私はじっと見つめている
ときに優しくときに激しく
流れるように囁くように
指は水面(みなも)を
夜の水面をはじいて動く
私のためにだけ一夜中(ひとよじゅう)
あなたは曲(うた)を奏でてくれる
ときに優しくときに激しく
なだめるように呟くように
溢れる想い 零れる想い
夜の岸辺によせては反す
私はじっと見つめている
ただの一度もこの身には
触れることのないその白い指
私のために時も忘れて
夜の終わりまで弾きつづける
やさしいあなたのやさしいうた
私はしらべの外にいて
ピアノ弾くあなたの指を
ただただじっと一夜中
飽きることなく見つめている
私は指を見つめている
戻る 編 削 Point(6)