小夜曲/ルナク
 

ピアノ弾くあなたの指を
私はじっと見つめている

ときに優しくときに激しく
流れるように囁くように
指は水面(みなも)を
夜の水面をはじいて動く

私のためにだけ一夜中(ひとよじゅう)
あなたは曲(うた)を奏でてくれる

ときに優しくときに激しく
なだめるように呟くように
溢れる想い 零れる想い
夜の岸辺によせては反す

私はじっと見つめている

ただの一度もこの身には
触れることのないその白い指

私のために時も忘れて
夜の終わりまで弾きつづける
やさしいあなたのやさしいうた

私はしらべの外にいて

ピアノ弾くあなたの指を
ただただじっと一夜中
飽きることなく見つめている

私は指を見つめている






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