岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
積極的に迷うことなく情熱的に歌う場合、余りにも対象を一挙にとらえようとするが故、対象は一層不透明になってしまうのです。岩田にとって詩人はサディストでしたが、サディストであるがゆえに、逆にいろんなことについて留保せざるを得なかったのです。
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動物の受難
あおぞらのふかいところに
きらきらひかるヒコーキ一機
するとサイレンがウウウウウウ
人はあわててけものをころす
けものにころされないうちに
なさけぶかく用心ぶかく
ちょうど十八年前のはなし
熊がおやつをたべて死ぬ
おやつのなかには硝酸ストリキニーネ
満腹して死ぬ
さよなら よごれた水と藁束
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