滲むということ 有るということ 無いということ/青土よし
#滲む
空っぽの鞄を持って歩いていると、友人は、どうしてそんな意味の無いことをするのかと笑った。私には鞄に入れるべきものなど無いので、なにも言い返せない。それなら手ぶらで歩けばいいのだが、周りの人はみんな大なり小なり鞄を持ち歩いている。その中で何も持っていない自分を想像してみると、たまらなく惨めな存在に思えるのだった。
#有る
心に眠る「ほんとう」を思うと、視界が暗転して、鳩尾の辺りをピストルで撃たれた様な衝撃を受けて、しかし血を流すことは無く、布状の身体が暗闇にぶわりと拡がって、やがて、掴んではこぼれる、ただの粒子だった頃へと回帰するのだ。
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