彼女/月乃 姫花
彼女は古いホテルに住んでいる
訪ねて来る人はいない
アールグレイの紅茶をこよなく愛し
その香りと味に心震わせている
そんな彼女のところに珍しく人が訪ねてきた
それはまるで子犬のような美少年だ。
彼は彼女をホテルのバルコニーでみかけた
彼は一瞬に彼女の虜になった
長い髪、澄んだ黒い瞳
そして彼女の放つ妖艶さに
「僕をあなたの一部にしてくれませんか?」
彼の言葉は震えながらも彼女に届いていた
彼女は微笑み彼に自慢の紅茶を入れてあげた
もう夕焼けがキラキラしている窓辺に
二人は見つめ合った
そして時が止まった
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