ジーンとジザベル/雅寛
 
…遠くで獣の声が響く……。

……ああ、どうしてこんな事に成ったんだろう……。
僕は君の張り付く様な声が欲しかっただけなのに。
気が付けば何時も、全てが虚しく感じて、終わる。
横たわるのは、血塗れの君の残骸。
何時も君を思って、自分を慰める夜が全てだったのに!

ジーン、許されない罪ならば
ジザベル、贖う事すら出来ないの?
僕等が同じ液で無ければ……。
僕等が醜悪で無ければ……。

君のバラバラに裂いた腹の上で
確かに植え付けた種は咲くんだ。
それは掌を伸ばし、何処までも遠くまで。
枝が僕の指を傷つけて血を吸う。
赤く染まる無花果のつぼみに花が咲くんだ。

……誰も居なく成った楽園に、
僕は君のバラバラの木を埋める。
そして遠い未来……、
僕等の子孫があの木の下で愛し合えれば……。
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