夏の夜/ホロウ・シカエルボク
 
なんかないんだ
つぎの言葉なんかないんだぜ
そこに座っていてもどうにもならないんだ
もう
なにも
ぼくには言えることはないんだ
かたくなな
きみを見てると
ぼくは思わず
声をあらげてしまった
いいかげんにしろよって


すると
きみは
立ちあがって
にっこりと笑って
ぼくに背を向けて
駆けだして行った
ぼくもよく知ってる
でも二度と行くことのない
清潔な部屋の中へ


周りの視線が気になって
ぼくはそこを離れた
自動販売機で缶ジュースを買うと
ガラスが割れる音がした
ああ
夏の夜だ






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