黒アンモナイト記/salco
さかんに水が降りますね
明日に蓋でもするように
おびただしく注いでおります
地面の下はどうなっているだろう
私はこんな時決まって
泥濘に埋もれた兵士の白骨を連想します
それから恐竜の化石とか
みな雨に濡れていましょうから
消え去った者どもに感応してしまいます
江戸では汚れた箱枕に頭を乗せて
廓の女もこうして大雨を聴いていたでしょう
多分、里の親きょうだいの暮らし向き
恋しい男の身の振りや
それから寺の絵草子で見た、
もっと昔の女の境遇なんかを想い
なぐさんでいた筈
雨はもう10億年間降っています
この星の中心には巨きな巨きな洞があり
そこまで水は届き
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