夜でも どうでもいい話/佐々宝砂
り(どうでもいいけど、山に入ると私はやたらに考え込んでしまう、結局、何も考えないで、なんて無理なのだ)。
今は飛ぶ時期ではない。飛べないときには、飛ばない。無理はしない。自分史のなかに特筆すべきトピックがあるとしても、いまこの瞬間にその特筆すべき出来事が起きたとしても、私はそのトピックを書いたりしない。それは書けるときに書く。書きたくなったら書く。あとで書く。と言っておいて、私は案外早い時期にそのトピックを書くかもしれない。あるいは一生書かないかもしれない。なんにせよ、私は自分の生の生活を書くことが嫌いだから、ものすごーい体験をしても生のままでは書かないだろう。
ちゃんと洗って、アクと臭みを取り除き、包丁いれて、下味つけて、火を通して、もっかい味付けして、なんならもいちど火をいれて、綺麗に盛りつけて、「これが私の人生です」、さあ、どうぞ。
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