「そして虚妄へと至る」/桐ヶ谷忍
いた
特定のナニカではなく
ただただ問い続けていた
ただただ訴え続けていた
なぜ
この手は何も掴んでいないのかと
なぜ
私はいつもひとりなのかと
さびしい、と
私の手はいつも冷たいのです
真夏でも冷たいのです
手の冷たい人は心のあたたかい人、なんて云うけれど
私の心はいつも寒い
寒すぎて凍えています
あたたかさを齎してくれる体熱を探しているけれど
けれど、
なのに。
そうして私は
問う
訴える
求める
宛先のない空行の手紙を
今日もまた、一枚。
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