「そして虚妄へと至る」/桐ヶ谷忍
宛先のない、差出人名だけ書いた
何一つ言葉の綴られていない手紙を
したためる毎日だった
訴えたいこと
懇願したいこと
助けてほしい、と
どれだけ書いても書ききれないくらいある
そんな毎日
カミサマを宿している人を羨んだところで
私の中には信仰の対象はない
信じるナニカもない
すがるものがないのだ
だから宛名を書けない
便箋も空白
それでも、
それでも。
けれど、いつも問いかけ続けていた
それは架空のカミサマであったかもしれないし
あなたや、両親や、友人や、ナニカだったかもしれない
実際には問わず、無言ではあったけれど
常に、問いかけていた
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