遠いまなざし/takano
 
みだされていたはずが いっこうに視界の遠近はたもたれたまま 過去の情念だけがまえのめりにすすもうとして息をとめる


 たおやかに稲穂がゆれている 蟲たちの戯れをはぐらかし いのちのおもさをささえている

畦道の小石をけりながらバス停までのせつない沈黙は鳥影のように父の背をついばんではとびたっていった

 そんなある日の午後

   地は

 割れた


(稲妻が眼孔を斜に刺し、明滅して所在をしらせる「どくろのアポリア」が暗闇のなかにたちあらわれる その気のとおくなる深淵の深さに絶望を確信する あゆむことを断念し また景色のうつろうままにやりすごすこと けしてたちきえることのない この膨漠の死海をさまよいつづける それは緻密な幻想にカモフラージュされた電子界においてはなおさらのこと)


 地の底で 3人の語り手は出会い 足下でジュドウする浮卵の類性に忘我し結束する

 そして すべての死はやってくる
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