遠いまなざし/takano
白煙の層が内側からゆるんでとけて 希薄な円筒をえがきだすと 円い暖簾状の幕がたれ そのむこうに藁で葺いた一軒のふるびた家屋がうつむいてかしこまっているのがみえる
まねかれるように胸元からたおれこみ暖簾をおしてむこうへわたる 畏れや躊躇いをやさしくふみつけながら
昭和56年式のマツダファミリアが 左手にうつる道具小屋の庇から放射された紫の蜘蛛の巣に護られ 死んだふりをした臀部がさそっている
其処は豊饒な人心にみちた避寒地であったけれど 悠久のときをかけてのがれついた 貧沃の聖地 車道からみえる平凡な農村のたたづまいは 初秋に豊饒な稲穂の群れをうつし 初夏には子どもた
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