逃げ水を追って/かんな
 



原寸大のあいを
ゆりかごで揺らす
太陽のひかりを浴びて
おおきく育まれた
栄養素というむすびつき

遠くで誰それが呼んで
名があかく色づいたよう
葉脈を通って
根から吸い上げられた出逢い
果実は明日に向かい膨らむ

海底に差す
ひかりの孤独を想像する
神秘のようで
偶然の産物のようにわだかまる
正しさが明らかだとは限らない

蒸発した水分が
雲となり雨となり
やわらかに膨らんだ大地に降り注ぐ
万物は廻り巡るけれども
到達はせずに結論などない

何処かで
氷柱のように滴り凍る音色に
落下を免れないいのちという尊さ
やすらかな寝息を立てて
両腕で抱こうか

見出せない真相に
季節はせせら笑って流動する
結実して散った花びらに
大きな意味をもたらさずとも
謳歌される生というもの



 夏の到来に
 逃げ水を追って旅に出る
 その折にしたためる




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