ビート(スピード、そして静かな波)/ホロウ・シカエルボク
するんだ、いいかい、もしもそれを奇跡的にすべて書き記すことが出来たとしても、それは本当の意味でのすべてを書き記したことにはならない、なぜならばそれは、その時そうであったというすべてでしかないからだ、わかるかい、フォーカスは限定されてはならない、そして―時も限定されてはならない―とらえるためには、とらえられてはならない、あるものを、あるがままに描かなければならない、すべては―それが本当に余すところないすべてであったとしても―次の瞬間にはそれと同じだけ、あるいはそれ以上のすべてが、指先にペンをくっつけてる人間のもとには押し寄せてくる、それはまるで波のようにね―あとからあとからやってきて、どこかへ去っていく、それがどれくらいあるのかなんて、誰にもわかることはない―生きている限りそれはやってくる、やってきては去り続ける、言葉じゃない、ビートでとらえろ、名前をつける前に目の前の紙に書きつけてしまえ、きっとそれは取り上げられたばかりの胎児のように、生々しく輝いて見せるはずだ。
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