「凍える蝶」/桐ヶ谷忍
 

そうして
ようやく何故アゲハを凍りつかせたか
思い至る
夏の終わり
もうすぐ何らかの形で終えるはずだった
アゲハの最期
その、何らかの、どうやって死を迎えるのかを考えると
私には耐えられなかったのだ
うつくしいアゲハ
弱り切っている所を外敵に襲われるのではないか
あるいは人に踏みつけにされやしないか
花の下で安らかに死んでいくのか
分からないからいっその事
うつくしいまま
殺してしまった
私は床に落ちたアゲハの残骸をかき集めて
ユリの鉢植えに弔った
ユリもまた、枯れ始める前に凍らせよう
ぼんやりとそんな事を考える
うつくしいものは
うつくしいままに殺し
ありえない形で死体を壊す
自分の中の冒涜心に初めて気がついた
夏の終わり


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