ここを過ぎて悲しみの街/涙(ルイ)
 
狂ってしまいそうなくらい暑い日だった
私はカラカラに乾いた喉を潤すためにコーラを買い
そこでしばらく座り込んで街並を見つめていた


強い陽射しにいまにも溶けてしまいそうなアスファルトの照り返しがきつい
目の前をケイタイでなにやら話をしながら通り過ぎる40前後のサラリーマン
額の汗を拭いながら今日もあくせく働いている
大きな荷物を抱え 腰を曲げながら歩くおばあさんの横を通り過ぎる自転車の青年
夏休み前なのか 帰りの早い女学生たちの笑い声
悲しみがすっぽりとなくなってしまったかのような風景
なにかを包み隠すような平和的空間がそこにはあった


私はふと思う
たとえばいま
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