「竪琴」
細かい
木の枝に
包まれて眠る
にぶい銀色をした
竪琴の音色たち
それは、
突然の風におびえ
南へと巣立っていった
「柔らかな屋根」
金物屋の
寧ろ柔らかな屋根
わたしは静かに
静かに踏みつけてゆく
じゅわん、
じゅわわん、
鳴っている……そうして
朽ちてしまうものが
あなたへの
愛情です
「足の裏の湿地帯」
足の裏に一匹の蛭が張り付いている
そこから、出っ張った腹にかけて
広大な湿地が広がっている
午後、
日は
琥珀色に澄み、
貝殻のような気持ちで私は
時計をゆっくり分解してゆく
(電話が鳴る、
一度だけ、
明白に鳴る。)
「白い絵の具」
白い絵の具で
あなたの長い髪の
一本だけをノートに描いた
わたしが生きることはいつも
小さな震えのようなものだから