樹海の夜/
ホロウ・シカエルボク
妙に近い場所で
聞こえてくる誰かの声
聞き取れず
無視できない
例えるなら
かすり傷の
痛みのような
その声
高いというほどでもなく
低いとも思えない
どこかしら希薄な
希薄な現実のその声
耳を澄ませたときには
いつも、もう
遅いのだ
沈黙が喋りつづけ
言葉は白ける
言葉は沈黙になるが
沈黙のように話すことはできない
おれは時計を見ているが
それがどういうものであるかは
いまは判らない
ただ窓の外が
白濁し始めて
夜は…
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