夜めぐる夜 ?/木立 悟
森が硝子の器を携え
自らの子を差し出すとき
いいのだ もういいのだと
誰も言ってはやれないとき
水は水につながらず
島へ島へわだかまり
けして何かを追おうとはせず
ゆるやかな曇りの循環を視る
蒼は蒼に起ち上がり
何処にも居ない城を照らす
此処に在るのは光の苦み
巡るものだけが知る痛み
羽が四ッ足を透りぬけ
冷たさは碧にひるがえり
過ぎて過ぎて 五つめの荒れ地に
かたちにならないよろこびとなり
石の葉から石の葉へ歩み 倒れて
たとえ水音にさえ嘲笑われても
名を持たぬものは降りそそぎ
ただただただただ積もりつづける
呪いのように波のように
壊れた灯だけが照らす道には
石に彫られた文字を読む雨
かつて住んでいたものたちへ
土へ土へ 沁みこんでゆく
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