夜めぐる夜  ?/木立 悟
 



冬のあぶく冬の蒼
橋を洗い水を洗い
よどむ流れの背をつまみ
波を姿に押しもどす


膝の上
水の爪
氷そそぐ水
灯の下の無音


そこに封じようとするこころみ
そこから出ようとするこころみ
逆まく
風の毛なみ


誰も住んでいない街の道は
空に洗われ 綺麗に静かで
よごれた窓だけが
話しつづけている


水の底にしか現れない花
目と星と海を結び
編んでも編んでもとらえられない
火の貝殻のつぶやくうた


喉にいくつ花を落としても
言わないひとは何も言わない
見たこともない服を着て
誰のものでもない笑みをうかべる


[次のページ]
戻る   Point(6)