僕たちの/佐藤伊織
なコンクリが流れ着きました
あの楽しげなざわめきは
津波の泡の飛沫だったんですね
今日も
どこかで
誰かが殴る音が聞こえます
私も日々
誰かを殴っています
この国には司法もないですが
私刑はどこにでもあるから
結局
神は細部にしか宿ってくれないから
こうして
大きなものは失われて
私たちは箸の上げ下ろしのようなことを
一つ一つみつけては笑いあう
次は何を笑ってやろうか
卵が好き
生まれる事のない卵が好き
食べられなかったら腐っていくだけの
あの新鮮な卵が好き
負ける事を自覚しながらも
逃げつづけること
僕たちの取る戦略は
これしかないんじゃないでしょうか
仕事から
生から
社会から
正義から
平和から
必ず失敗するだけの逃走を
どこまでも試みるくらいしか
それくらいしか
やることがないのです
戻る 編 削 Point(1)