遠い渦/ゼロスケ
悲鳴を見逃す
牛を牽くだけで
生活できるわけないだろう
アルタイルは川向こうで
ベガも知らないことをしている
「創らなければ
実在できない」
文選箱には感嘆詞しかなかった
ベテルギウスが腑抜けるまでを
叙事詩にしようと考えていたけど
ガンマ線を浴びるまでもなく
正気を保っていられそうにない
他に面白いことがなければ
動画サイトで妹の死でも実況する
あくる朝の弱いルクスは
角へ積まれた抜け殻を示す
首から提げる双眼鏡と
からの弁当箱を頼りにして
さっき見たものを忘れる
再帰的に飛ぶ野鳥を観察すると
鳴き声がそのまま名を告げた
図鑑を編纂しなくちゃ
声しか聴かないで
前髪が真下の昼を
更に暗くするとしても
おしゃべりな花ざかりを
刈り取りたくはない
城山の石垣を登った
やぶ蚊と蛙はすでに友だちだ
瞳ばかり大きい女の子が
一輪車へ乗ってやってくる
足首がほっそりとした君
僕の神話にならない?
空に昇らせ星にしてあげる
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