生きた行動学/天野茂典
駅はドラマチックな場所だ
大勢の人間がつどい別れさってゆく場所だ
見しらぬもの同士がすれ違う
一期一会の場所だ
電車がひっきりなしに
フォームへ滑り込みまた発車してゆく
駅ではマン・ウオティングができる
動物園の猿をみるように
コーヒー・ショップに腰掛けて
流れゆく人種を観察するのだ
あるものは定期券を忘れ
またあるものは財布を忘れ
困惑している
時間がなくてとりにもどれないからだ
トイレに駆け込む人もいる
入れ歯ぼの人も
北風にカチカチ音立てて
耐えている
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