家路/伊月りさ
着のブレーキが鈍い時には
レールの間を確認してほしかった
わたしたちの
だれもいない棲家を
棲家たらしめるためには
日暮れとともに門灯をつけ
朝日に裂かれたカーテンを束ねる
ただ
それだけが必要でした
口を開くこと
わたしはすでに雨粒だったということ
落下しつづけるわたしの遥か 地面の上でようやく
閉ざされた口があったということ
すべて収束に向かっていたこと
甲高い、白い、なきごえ
傘などの忘れ物にご注意下さい
簡単に濡れようとしてはいけません
壊されたゆえに裸になることと
壊されぬように裸になることを
使い分けて下さい
教えて下さい
そう、言うべきだと促された
迷子
のふりをして
足首を浸していた
数人と目があって
数人が目をそらして
直線的な轟音はきちんとだれかをよけました。
かわいた人型が生まれる。連れて行くことはできないのだとわかる。わたしにだって、それくらい
わかっているので
足跡はいつも
黒く、家路に
積み重なって深くなる夜
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