空っぽの手のひら/ただのみきや
 
石で打たれるような
犬に追い立てられるような悲しさに
居ても立ってもいられなく
ただただ早く帰りたかった
日没に向ってひたすら走り続けた


貝のように固く握りしめている
決して手放してはいけないもの
あまりに長い間走り続けていたので
何を握っているのかも忘れてしまった
ただ緩みそうになるたびに
子どものように全身で握り直したのだ


やがて疲れて 身が傾いで
よたよたと道の端に寄ったかと思うと
そのまま川へと転げ落ちてしまった
口や鼻から咽ぶ恐怖に怯えながら
流れに抗うこともできずに迫ってくる
口を広げた暗渠に飲み込まれようとした その刹那
誰かの手が差
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