浮かばずの朝/八男(はちおとこ)
 
朝 今日こそは詩を書こうと思い

一時間寝てみるが 何も浮かばず


窓から春らしい光が射しているので

散歩でもすれば きっと詩が見つかるはずだと外に出れば

緑の何やらのつぼみが風にゆれていた

昔 売れていた芸能人と同じく名前が思い出せない

この植物はなんだろう

ミロボンと名付けてみた ミロボンがゆれている

しかし 詩が浮かばず



山の近くの公園を歩く

松の葉を一本ずつ抜いてみる

この感覚を楽しんでみて 何か浮かぶだろうか

松の葉を一本ずつ 抜いて 抜いて



すると 

背後から 村のおばあさんが

無言で通り過ぎて行くので

おはようございますと言ったら

おはようございますと返ってきた

松の葉を一本一本抜いていることに

言い訳はできなかった



きっと そういう人だと思われただろう


私は 療養しているような気分になれて

すがすがしい思いがした





何も浮かばず


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