夜めぐる夜  ?/木立 悟
 





魂のないものを
魂のないままに照らし出し
街はまぶしく
人はまぶしく


葉先についた水が
薬と埃を運ぶ
正しさのない
正しさたち


渇くほど
空はまわり
音を削り
痛みは無く
行方は暗く


はばたき駆るはばたき
羽の生えた空洞の落下
空へなびく
空へなびく冬の黒


流木が集められ
未明に燃され
水は遠く
応えは遠く


石灰の両腕
壁にひらかれ
思い出せない色の名を呼ぶ


正反対の似たものが
かすかに街をふるわせて
照らされないものたちへ
曇間の泡を見せてゆく


坂の下に乗りものが着き
小さな鈍の影が集まる
散る花のひとつひとつが
坂をひとりのぼる背を見る


言いかけてやめた言葉がやがて
水の音 光の音となり
憶える憶えられないを越え
そこに在ることを刻み出す





























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