生活をしていると/岡部淳太郎
生活をしていると
すべてが透明になってゆく
それが良いことであるのか
それとも悪いことであるのか
そんなことにかかわりなく
すべては透き通って
その存在感を緩やかにする
今日も洗濯をして それを干し
仏壇に線香を上げて 手を合わせ
合わせきれなかった私の
遅れていたすべての時間に
いっしゅんのうちに祈りを捧げ
そうして玄関を開けて外に出る
空は晴れている
あるいは曇っているか 雨だ
たいていはそのうちのどれかであって
だからこそ どうでもいいことでも
あるのだが
生活をしていると
すべてが色を失くしながら尊くなってゆく
色がないから ほとんど見えないから
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