a ice air ship/Akari Chika
 
こには
言葉の炭だけが残った

雨からも
虹からも
借りたものがある
遠い昔にも
未来の寄る辺にも
伝えておきたいことがある

そっと靴を脱いで
緑が肌を這う感覚に
いっそ呼吸ごと
芽吹いてしまえばいいと

誰のからだでもない
でも誰かの呼び声
水泡を閉じ込めたメロディに
紡ぎ出すものがある

ひとくち舐めたら
わたしを隠してね
濡れたコーンの端に甘い感触が残っても
小さな舌の影に
わたしを隠して

気流がしたたる軒の下
どの陰もまとわない
わたしをどうか見つけて
熱い紅茶の鏡に
映らないわたしを見つけて

そこから
新たな息が
切り拓かれるから

鳥の継ぎはぐ音
ささやき
ことばの炭が
空へ燃え移る

冷凍庫に並ぶ
臆病な飛行船が
グラスへ波紋を落とすころ

何も焼き付けない

写真を
白紙にもどすように

わたしは





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