夜道/中川達矢
財布とケータイだけ携えて、ひとり
夜道をドライブする
行く当てもなく、本屋にたどりつき
駐車料金と550円を支払って
本屋をはしごする、ひとり
夜道をドライブする
行き先どおりに、本屋にたどりつき
駐車料金と120円を支払って
家路につく、ひとり
夜道をドライブする
あいだ、ひともくるまも通らない交差点で
赤信号を前に止まる、ひとり
15秒の歳をとる、みんな
さっきすれ違った薄着の少女の
生まれてからさっきまでの
あいだの
十何年かを
2秒の出会いと別れで知ったつもりはなく
思い返そうとも思い返すつもりもなく
青信号を前に進む、ひとり
見落とされていく、みんな
思い返したいひとに
夜道で出会えることはなく
時速0kmになって
家に着く、ひとり
夜道をドライブした
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