夕焼けのあとは藍空/たりぽん(大理 奔)
 

また夏が近づいて
文字だけになってしまったあいつが
梅雨が穿った水溜まりで
湿った革靴に弾かれる
激しく、なにかにあこがれて
そう信じて為すことの結末を嘘とはいわないけど
積乱雲越しのまばゆい落陽が
明日が来ることのほんとうを
この頬にしょっぱく刻む
電停で路面電車に飛び乗るように
切符もなしで会いに行けはしない
文字だけになることは
そういうことだ
いつも同じ顔ですましている
その横顔はほんとうじゃない
薄汚れていても
嘘つきでも
涙もろくても
寂しがり屋でも
おまえのほんとうをカバンに詰めて
越えていきたかった
ずっとずっと
ほんとうのまま
いっしょに越えていきたかった

そんなに高いところで
笑うなよ





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