夏の中で/yamadahifumi
夏の中で
夏がやってくる
世界がやってくるように
また一つの夏が
僕達の季節を過ぎていく
僕は幾つかの夏を知っている
剣道部の頃の夏や
大学生の頃の夏や
ニートの時の夏
でもそのどの夏も
この季節の夏ほど濃くも強くなった
僕の中の夏の思い出は
空しい失恋の思い出や
仕事先で上司に怒られたという思い出や
子供の頃無理矢理親に叱られて
学業を強制されたという思い出に満ちている
自分がとりわけ不幸だったとは思わないが
全体そのものが不幸であり
平和と幸福と名付けられた市民的不幸の真っ只中に僕らは生まれたのであり
その一端の飛沫を浴びたのだと
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