世界との齟齬を埋めるために/うめバア
何につけ過剰反応だよと
蚊に刺されたから切るねといって
やたらと、ありがとうを連発して
会話を終えた
ひどく疲れて、竹下通りを歩いて駅まで戻る
これから2時間も電車を乗り継いで帰宅するのだ
彼女は言った
私なんてずっと、違和感の中で生きているよと
外国でヘンな日本人と言われ、下手な英語で15年も過ごし
帰国したら浦島太郎、日本人に見えるよう、頑張った
でも、もうどちらにも、居場所はないんだよと
世界との齟齬を埋めるために
彼女もまた、そうやって歩いていた
でも、彼国で支配階級の言語を身につけて
多少は優越感あるでしょうと
違和感もそれは高級なものだよねと
それでもまだ、意地悪なこと、言いたくなった
だまっていたけど
私はまあ、ひねくれ者だ
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