田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
ていた、戦争という「夜」の記憶によって引き起こされる精神活動などをも殺さなければならない。発展を殺し戦争の記憶へと回帰すると同時に、戦争の記憶への執着をも殺し、発展・前進へと向かおうとする、相反する二つの傾向性がここに見てとれるのです。この詩には田村のそのようなジレンマが刻印されていると言えるでしょう。



 少し技術的な点を見ていきましょうか。まず気付くのは、この詩が非常に倫理的であるということです。「倫理的」とは、人がなすべきことを多く告知したり、人の間違いを非難したり、そういうことです。つまり、人が従うべき規範を提示して、それに反してはならないと命令し、それに反した場合はその違反
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